平成20年度はグルタミン酸トランスポーターGLT1ノックアウトマウスを用いて、GLT1と臨界期可塑性との関連性について解析した。 触覚毛C列を焼灼した場合の臨界期可塑性をGLT1ノックアウトマウスと野生型マウスで比較した。生後0日にC列を焼灼すると、野生型マウスでは、それに対応した障害側C列バレルが縮小・癒合し、隣接するB、D列バレルが相補的に拡大した。これに対し、ノックアウトマウスでは、バレル構造の変化の度合いが小さかった。生後2日にC列を焼灼した場合も、同様にノックアウトマウスでは構造変化の度合いが小さかった。臨界期が終了する生後4日にC列を焼灼したものは、いずれもバレル構造は保たれており、有意差はなかった。健常側では、いずれの場合も有意差は認められなかった。また可塑性の度合いをMap Piasticity Index (MPI)=(B2+B3+D2+D3)/2(C2+C3)にて評価した。生後0日にC列を焼灼した場合の障害側MPIは、GLT1ノックアウトマウス1.61±0.34(n=11)、野生型マウス3.80±2.21(n=8)となり、ノックアウトマウスで有意に低かった(p<0.01)。生後2日も同様に、GLT1ノックアウトマウス1.34±0.21(n=10)、野生型マウス2.79±1.79(n=10)となり、ノックアウトマウスで有意な減少が認められた(p<0.01)。しかし、臨界期が終了する生後4日に焼灼した場合は、GLT1ノックアウトマウス、野生型マウスの間に有意差は認められなかった(p>0.05)。 以上の結果より、GLT1は臨界期可塑性を制御する分子の一つであることが判明し、これの機能は、新生児期の口腔や顎顔面における感覚運動反射や成長に伴う神経系の発達変化に寄与していることが示唆された。
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