平成18年度の予備研究に聴力健診とアンケート調査を行った956名の岩木町民では、高音部の年代順に進行する閾値上昇を認め、加齢による変化が考えられた。男女別聴力像では、有意に男性の方が若年より難聴が進行していた。その理由の一つとして、岩木町では農家が多く騒音を伴う機器を用いた作業は主に男性が行っているため、騒音暴露の積み重ねにより聴力の男女差が生じたものと考えた。農業従事者とそれ以外の職業に分け、聴力データの比較を行っている。 また、今回得られた他のアンケート結果や検査結果を基に難聴を進行させる誘因を検索しているが、まずは動脈硬化に着目した。動脈硬化の指標の一つである脈波伝播速度(PWV)を測定し、周波数ごとに聴力閾値を、年齢、BMI、飲酒や喫煙といったライフスタイルなどにより補正し多重比較を行った。 男性、女性いずれにおいても聴力レベルとPWVの有意な相関が見られ、特に女性においてはその影響が強いことが示唆された。これまでにも動脈硬化が難聴の進行に影響することはいわれてきたが、今回の結果はそれをさらに示すものである。女性の方が男性よりも影響が強く出たことに関しては、先に述べたように騒音暴露の影響が除外されていないことも要因のひとつと考えられた。今後は平成19年度、20年度のデータも加え、対象を増やし、さらに動脈硬化に関連し、高血圧、高脂血症、糖尿病などについて難聴との関連を探っていく。
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