平成20年3月現在、膵癌細胞株Panc-1、BXPC3においてMSX2に対するsiRNAを用いたノックダウン実験及びMSX2発現ベクターを用いた過剰発現実験により、癌幹細胞に富む細胞分画で高発現が報告されているトランスポーター遺伝子、ABCG2の発現がmRNAレベルでMSX2により正に制御されていることが明らかとなった。この現象がこれらの膵癌細胞株において生物学的な悪性度にどのように影響しているかにつき、Cell sorting法を用いてABCG2高発現細胞を膵癌細胞株より分離し、解析を行うべく検討中である。MSX2によるABCG2の転写制御に関してはレポーターアッセイやChIP assayにて検討する予定である。また、以前に我々が報告したBMP4によるMSX2の誘導に際して、膵癌細胞株及び膵癌臨床検体において高発現が報告されているカルシウム結合蛋白質、S100Pが同時に強く誘導されていることが明らかとなり、BMP4によるEMTに際して重要であることが判明している。我々はMSX2もBMP4によるEMTの誘導に必須であることを報告してきたが、本分子とMSX2との機能上の協調に関しては未だ報告が見られておらず、検討する価値があるものと考えられる。その他、新規MSX2標的遺伝子の同定を引き続き進めている。以上の結果のうち、S100Pの誘導と機能に関しての報告を平成20年4月、AACR annual meeting 2008にて発表予定である。
|