2009年3月現在、MSX2過剰発現細胞株におけるトランスポーター遺伝子ABCG2の発現が蛋白レベルで上昇していること、また対照的にMSX2ノックダウン細胞株でABCG2の発現が低下していることをFACSにて確認している。MSX2過剰発現細胞株ではゲムシタビン処理に対して抵抗性であることがMTTアッセイによって確認された。この結果は癌幹細胞が抗癌剤に対して抵抗性を示すことと一致する結果とがえられ、MSX2が癌幹細胞としての性質を規定する因子となりうることが示唆されている。ABCG2のプロモーター解析により、転写開始点より400-600bp上流に存在するMSX2 binding elementがABCG2の発現制御に重要であることが判明した。現在、この領域を標的とした新規治療法の開発を検討中である。以上の結果については2009年5月、日本消化器病学会総会にて報告予定である。 また、MSX2とともに膵癌細胞においてBMP4により誘導されるカルシウム結合蛋白質S100PはBMP4によるEMTに寄与するが、その誘導過程にはMSX2と同様にSmad4依存性の経路が必須であることが明らかとなった。興味深いことに、MSX2およびS100Pの誘導はいずれもBMPシグナルによるde novoの蛋白合成が必要であることが判明した。この結果はSmad4依存性の経路により誘導される未知の因子がEMTに重要であることを示唆しており、今後の治療標的となることが期待される。以上のBMP4によるS100P誘導機構の詳細については以下の通り論文発表を行った(Cancer Sci. 2009 Jan ; 100(1) : 103-10.)。
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