研究概要 |
健常者20名に対して薬理学的機能的MRI(ph-fMRI)実験を行った. 被検者にトリヘキシフェニジル(抗コリン薬)2mgもしくはプラセボを内服してもらい, その1.5時間後に様々な情動覚醒度を有する写真を記銘する際の脳活動をfMRIを用いて測定した. その2週間後に記銘した写真に関する再認テストを施行した. 2週間の間隔を空けて, 内服する薬を変えて同様の手続きをもう1度行った. 1回目の実験と2回目の実験に内服する薬剤(トリヘキシフェニジル, プラセボ)の順序は被検者間でランダム化した. 2x2の繰り返しのある分散分析を用いて, 再認テストの成績に与える情動の効果(情動瀉心対中性写真)および薬剤の効果(トリヘキシフェニジル対プラセボ)を検討したところ, 情動の主効果(情動写真の再認成績が中性写真の再認成績よりも良い), 薬剤の主効果(プラセボ内服の回の再認成績がトリヘキシフェニジル内服の回の再認成績よりも良い), 両者の交互作用(中性写真に比して情動写真のほうが, トリヘキシフェニジルによる記憶低下効果が強い)が認められた. fMRIデータについては現在解析中であるが, トリヘキシフェニジルの投与によって扁桃体および海馬の活動が低下していることを確認した. 今後より詳細な画像解析を行い, 高コリン薬による情動記憶の低下作用の神経基盤について検討していく予定である.
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