研究概要 |
本研究ではヒト胎盤トロフォブラスト幹(TS)細胞を分離、細胞特性を明らかにし、マスTS細胞株との比較をする。またヒトTS細胞株の樹立を目的とした。 【具体的内容】 1、ヒトTS細胞の分離 ; 人工妊娠中絶施行例より初期胎盤絨毛を摂取。酵素処理および濃度勾配法を用いて栄養膜胞を分離した後、Hoechst染色しFACSでSP(side population)細胞を分離。免疫染色で表面抗原マーカーCD44, CD54陽性、CD45, CD29弱陽性、CD31, AC133陰性でTS細胞の特性を示した。RT-PCR法にて、マウスTS細胞と比較し、TS細胞特異的発現のみられる(EOMES, CDX2)の発現が著しく亢進していることが判明した。 2、ヒトTS細胞の樹立 ; 胎盤SP細胞は、マウスTS細胞と同様の条件で培養し、コロニー形成を確認した。境界明瞭な上皮様細胞を現在単離培養中である。今後は安定な細胞株を維持するためには、10-20代の継代培養が必要であり、特性の変化がないことも確認しなければならない。 【意義】今後生殖医療、再生医療への新たな技術開発や胎盤蛋白、酵素の精製、分離や薬剤の胎盤への影響など幅広く正確な情報を提供でき、トランスレーショナル当リサーチの基盤へと発展させることが可能である所に本研究の意義がある。 【重要性】ヒトTS細胞は、ヒト胎盤の発生、機能に関する研究に必須で極めて重要である。 【問題点や変更点】期間内に十分な結果が得られなかった点は、ヒトTS細胞株の機能活性、分化に伴う分子機構の解明を行うことである。変更点は、胎盤SP細胞は未分化を維持するため、Bmil遺伝子をレンチウイルスを用いて細胞内感染させずに、マウスTS細胞と同様の条件で培養した点である。
|