歯周疾患において骨芽細胞骨形成能の低下を誘導すると考えられる骨吸収性サイトカインの一つであるTNF-αは、前骨芽細胞の骨芽細胞分化を阻害するが、TNFによる骨芽細胞分化阻害機構は不明である。私はこれまでにストレス依存性キナーゼJNKがII型BMP受容体の一つBMPRII(以下BRII)のC末端に会合すること等を明らかにしBRII機能調節への関与を示唆した。本研究初年度では研究計画に則り以下の検討を実施した。 1.JNKによるBRII-Thr977リン酸化依存的BRII会合分子の探索:Flagタグ融合型BRII及びJNKによるリン酸化不能型BRII-Thr977点変異体の安定導入型HEK細胞におけるテトラサイクリン(以下Tet)依存性発現誘導条件の検討及び、Tet依存性に誘導されたFlag融合BRIIのFlag抗体による免疫沈降実験の条件検討を実施した。現在は実験計画にある二次元電気泳動による共沈タンパク質がなすスポットの検出条件を検討している。これによりBRIIリン酸化依存的BRII会合新分子の同定が期待される。 2.BRIIとLIMKとの親和性のTNFによる変動の検討:LIMKはBRIIのC末端会合分子として知られることからTNF依存的なBRIIリン酸化に伴う会合促進又は抑制がおこるかを検討したが、親和性に関する影響はない事が示唆された。 3.BRIIのDullard(以下DL)依存性プロテアゾーム系分解誘導機構とJNKとの関係の解析:DLは脱リン酸化酵素でありBRIIの分解を間接的に誘導するが、BRII上の作用点は不明であった。そこでBRIIの部分欠失変異体とDLを用いDL依存的BRIIユビキチン化部位を検討したところBRIIは複数のユビキチン化部位を持つことが主示唆された。また不活性型JNKがDLによるBRIIの分解抑制に働く可能性が示唆された。
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