本研究では、臨床試料より得られた患者個々の歯周病に特に関連するとされる、免疫学的、細菌学的ならびに遺伝学的パラメーターと、採取部位の臨床病態との関連性を比較・検討し、歯周病の発症・進展機構の解明および歯周病の診断法の開発を目指す。本年度は、東北大学病院附属歯科医療センター歯内歯周療法科を受診し、歯周治療を開始する患者からインフォームドコンセントを得た後、臨床資料・研究試料の収集を行い、予備的な実験を行った。すなわち、種々の臨床資料を得た後、初期治療のスケーリング・ルートプレーニング時に、歯肉試料はポケット底部を掻爬し、歯肉縁下プラークは滅菌ペーパーポイントを用いて採取した。歯肉縁下プラークからgenomic DNAを、歯肉からmRNAを抽出した後、-80℃にて保存した。プラークgenomic DNAを用いて、歯周病原性細菌特異的なreal time PCR法を確立した結果、健康な歯肉縁下プラークでは、Streptococcus属などの通性嫌気性の歯面初期付着細菌が優勢であり、一方、歯周炎患者の歯肉縁下プラークでは、嫌気性菌が優勢であったことから、歯周炎の進行に伴って、嫌気性菌の増殖に適した環境へとシフトすることが示唆された。現在、歯肉mRNAを用いて、歯周病巣歯肉中のサイトカインプロファイルの解析(RT-real time PCR)をTNF-α、IL-1α、IL-1β、IFN-γ、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p40の9種類をターゲットとして進めている。現在までに56試料のうち、24試料までの解析を終えており、今後、試料収集・解析をさらに進め、採取部位の歯周病の病態と細菌学的パラメーターとの関連性を検討する予定である。
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