本研究は動脈硬化性疾患と遠隔部位の慢性感染症の一つである歯周病との関連を検討する目的としている。 平成19年度は10月〜3月の計6回、岩手県花巻市大迫において実施された住民検診において、140名を対象にデータを得ている。同検診においてパノラマX線撮影を含む歯科学検査(口腔内診査および、口腔状態や食生活に関する聞き取り調査)を行い、歯周病の病態を評価する包括的データを得た。また、併せて実施された医科学検査結果より、動脈硬化性病変の評価指標となるデータを得ている。 本年度調査対象者のうち、検診で得られたデータの処理(画像の読み取り、数値化)が完了した52名に、昨年度の同検診の受診者110名分のデータを加え、口腔内に認められる歯周病の進行程度と、動脈硬化性疾患の指標との関連を解析中である。とりわけこのような住民検診の場にパノラマX線写真撮影を導入した例は過去になく、本研究の新奇性が高い。そこで今回は、パノラマX線写真から読み取れる歯槽骨吸収量を、すべての現在歯について数値化し分析に用いている。単相関では、歯槽骨吸収量および、歯周ポケット深さ、アタッチメントロスのような歯周病の進行を表す指標が軽度の者に比して、重度の者ほど動脈硬化症の指標も重度を示す傾向が認められている。しかし現段階では、年齢や性別、家庭血圧、他の全身疾患の有無、喫煙歴等による多変量解析では明確な関連は示されていない。 平成19年度受診者のうち、データ処理途中である88名を早急に分析に加え、さらに平成20年度に実施予定の同検診において対象者を増やすことで、本研究の目的を達成できるよう、より詳細な分析と検討を加えていく所存である。
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