アレルギー疾患の病態に深く関わっている、Th2細胞の分化に必須の転写因子GATA3の発現は、Ras-ERK-MAPK経路を介したタンパク分解制御によって調節されていることが申請者らの研究で分かっている。このERK-MAPKがどのような分子メカニズムで、GATA3のユビキチン化依存的な分解をコントロールしているのか明らかにする目的で、DNAマイクロアレイ解析を行い、ERK-MAPK下流で発現誘導される転写制御因子Gfi-1を候補分子として見出した。Gfi-1遺伝子欠損Th2細胞およびGfi-1遺伝子導入細胞について、GATA3蛋白の発現量、ユビキチン化状態、分解速度などについて検討を行った結果、Gfi1がGATA3蛋白安定性の制御に寄与していることが明らかとなった。Gfi-1遺伝子欠損マウスのナイーブCD4T細胞をTh2細胞分化条件下で培養した細胞について、細胞内染色法、ELISA法、定量的RT-PCR法、クロマチン免疫沈降法などの手法を用いて検討を行った結果、IL-5産生誘導能の著しい低下、IFNg産生能の亢進がみとめられ、それに伴い、活性化したクロマチン状態の指標となるヒストンH3の9番目リジン残基のアセチル化と4番目リジン残基のメチル化状態のIL-5遺伝子座での低下、IFNg遺伝子座での亢進もみとめられた。 そこで、Gfi1遺伝子欠損Th2細胞にGATA3を強制発現したところ、IL-5産生能とIFNg産生抑制能の回復、さらに、ピストン修飾状態の回復がみとめられた。 上の結果より、ERK-MAPKシグナルにより発現誘導されるGfi-1は、ユビキチン/プロテアソームシステムによるGATA3蛋白分解を制御することにより、GATA3蛋白の安定化の誘導を行っていることが明らかとなった。
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