研究概要 |
本研究は平成19年9月から研究を開始した。1年目である昨年度の研究目標は,ケアマネジャーの専門的行為の抑制をもたらすモラルディストレスを構成する要素を,文献検討およびケアマネジャーの実践経験から導出し,質問紙を作成することであった。そのためにまず,国内外の在宅看護,在宅ケア,訪問看護,地域看護,及びソーシャルワーク領域等における倫理的ジレンマやモラルディストレスに関連する文献レビューを行った。次に,平成19年11月,千葉大学看護学部倫理委員会の承認を得て,千葉県,福島県に在住する在宅介護支援センター,地域包括支援センター所属のケアマネジャー(介護福祉士,社会福祉士,薬剤師,管理栄養士,生活相談員)24名に,専門的行為の抑制をもたらしたモラルディストレスの経験について半構成的インタビューを行った。インタビューは介護支援専門員の職務の妨げにならないよう配慮し,書面及び対面により研究の主旨を説明し,調査参加の意思を確認したうえで,介護支援専門員のプライバシーが確保できる場所,希望する場所へ研究者が訪問した。インタビュー内容は許可を得てICレコーダーへ録音し,録音したデータは鍵のかかる書庫へ保管し個人情報の保護を厳守した。次に,インタビュー内容は業者に依頼して逐語に文字起こしを行い,語られた内容を質的帰納的に分析した。その結果,モラルディストレスの要素として,《利用者の価値観》《家族の介護力》《家族員間の関係性》《サービス利用に関する家族の価値観》《施設内医療職者の在宅介護に対する認識》《サービス提供者の力量》《サービス提供者間の連携》《介護保険制度運用上の利用制限》《財産管理上の問題》が導出された。研究期間が6ヶ月ということもあり,分析結果から質問項目を作成しプレテストを行い,その結果をもとに修正を加え,モラルディストレスのレベルを測定する質問紙を作成することについては,本年度引き続き実施する予定である。
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