研究概要 |
長管骨の変形・成長障害は、先天性異常、感染および外傷などを機序として2次的に発生する。治療には、矯正骨切り術・創外固定術が一般的に行われる。骨切りし変形を矯正する場合、下肢長管骨の変形の術前における定量的評価は十分な正確性を要求される。骨変形を定量的に計測する場合、変形骨の正面像と側面像のX線写真を用いてPaleyらの提唱した方法によって定量評価している。しかし、このX線写真を用いた変形の評価法には、骨の正面像・側面像の厳密な定義がなく、撮影時の体位や撮影方法の違いにより正面像・側面像が変わり、変形量の計測値が変わるという問題がある。さらに、回旋変形がある場合や、複合的な変形がある場合、変形量の計測が非常に困難である。このような背景からCT画像を利用した3次元画像を用いた変形の定量評価法の確立に着手した。H19年度は、主に3D計測が可能な特徴点の決定を行った。模擬大腿骨(Sawbones)を用いて、3mmスライスでCT撮影を行い3D測ソフトウエアで3次元モデルを行い、3次元モデル上で決定可能な特徴点の検索を行った。特徴点は、大腿骨頭中心・大転子最近位端・小転子・大腿骨最遠位端・大腿外側顆・大腿内側顆となった。各特徴点に対する線分(3次元ベクトル)に対する3D角度(3次元ベクトルの回転角)を算出可能とした。その上で、大腿骨骨折後変形治癒の患者に対して、倫理委員会同意の上で、患者同意の上で実際に3D計測を行った。PFA (Proximal femoral angle), DFA (Distal femoral angle)、はそれぞれ、102°/78°、83°/90°であり、3D計測が可能であることが確認できた。骨の3次元変形を精確に評価することは、正しい術前計画立案に有意義であり、より高い効果が得られる治療を行うことが可能になる。今後、症例を増やして有用性を検討していきたい。
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