研究課題
白血病を含めた造血器腫瘍において、サイトカインの制御から逃れて増殖するということはとても重要な因子である。特に、IL-3は多くの分化段階で必要とされており、その経路に重要なJAK2に遺伝子変異があると骨髄増殖性疾患をきたすことも報告されている。故に、私はinsertional mutagenesisの系を利用してIL-3依存性マウス骨髄細胞由来の細胞株からIL-3非依存性のクローンを確立し、そのウイルス挿入部位を解析した。その結果、得られたクローンの一つからXbp-1 (X-box binding protein 1)のという遺伝子を同定した。Xbp-1はERストレスに応答して誘導される転写因子として知られているが、IL-3依存性細胞株にIL-3を添加しない場合Xbp-1の発現が低下することが確認された。また、Xbp-1には、splicing variant(活性型)が報告されており、IL-3を添加しない場合、特に活性型のXbp-1の減少が顕著であった。さらに、ルシフェラーゼアッセイを用いてXbp-1の上流にあるERSE(ER stress Responsible Element)がIL-3シグナルに反応することを確認した。また、ER stressのマーカーとして知られるglucose-related protein (GRP)78が、IL-3シグナルにより誘導させることも確認した。さらに、活性型のXbp-1をIL-3依存性の細胞株に誘導すると、IL-3を添加しない時にapoptosisに陥る細胞の減少が見られ、抗アポトーシシ作用が確認された。また、myeloid系のマーカーの発現が上がり、一部では核が分葉を呈し、細胞質にアズール顆粒を持つことも確認された。これらのことより、ER stresはサイトカインシグナルと密接な関係を持ち、細胞の分化・アポトーシスなどに関わることが示唆された。
すべて 2007
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Experimental and Molecular Pathology Vol.83,Is sue 3,
ページ: 405-412