加齢黄斑変性(AMD)は先進国において失明原因の上位にあり不可逆的な視力低下をもたらす。病態の本態は脈絡膜新生血管(CNV)であるが、CNV発生後の視力改善は不可能なことから予防治療が最も望ましい。しかしながらCNV発症の機序は未だ明らかになっていないのが現状である。AMDの前駆病変である細胞外沈着物drusenに存在するAmyloid beta(A β)に今回注目し、異常蓄積したAβが網膜色素上皮細胞(RPE)の基底膜であり脈絡膜新生血管の侵入を防ぐバリアーであるBruch膜に影響を与えるかを検討した。in vitroにおいてRPEはセリンプロテアーゼであるHtra1の遺伝子発現が亢進していた。さらにCNV発生に重要であるMatrix metall proteinase2(MMP2)の活性化亢進が判明した。この活性化はMMP2遺伝子の発現がAβ刺激によっても変化はなく、MMP2を活性型に変換する酵素であるMMP14の発現上昇によっていることが明らかになった。また、AβからMMP14発現上昇に至る系路として、転写因子NFkBの活性上昇が原因であることが判明し、MMP14の発現亢進はNFkB阻害剤であるMG132によりブロックすることが可能であった。これらの結果よりdrusen中に異常蓄積したAβによりBruch膜の脆弱下が惹起されることが示唆された。今回の研究結果は、AβからCNV発生に至る予防治療を考える上で、セリンプロテアーゼや様々なMMPといった細胞外基質に影響を与える因子が新しいターゲットになりうることを示したことから非常に重要な意味を持つと考えられる。
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