研究概要 |
Shh(Sonic hedgehog)は、歯の発生過程において、シグナルセンターであるエナメルノットに強く発現しており、エナメル芽細胞分化において重要な働きを担っていると考えられているが、その機能の詳細はいまだ不明である。申請者は、未分化エナメル芽細胞株ALCにShhを作用させることによりアメロジェニン、アメロブラスチンなどのエナメルマトリックス発現が増加することを認め、さらにエナメルマトリックス発現の上昇が、Shhシグナルにおける主要な転写調節因子であるGli1を介する直接的な作用であることを明らかにした。すなわち、Shhを用いることによりエナメル芽細胞の分化を直接誘導できる可能性が示唆された。ところで、ShhシグナルとBmp(Bone morphogenetic protein)シグナルは協調して働くことが肢芽発生および歯の発生において報告されている。申請者はエナメル芽細胞においてShhシグナルがBmp産生を誘導すること、Bmpによってもエナメル芽細胞分化が誘導されることを確認した。さらに、Gli1発現ベクターを用いて、Bmp2およびBmp4が誘導され、さらにBmpシグナル下流の転写調節因子であるSmad(Smad5,Co-Smad4,Smad8)のリン酸化も誘導されることを確認した。このことから、ShhシグナルがGli1を介して、直接的にあるいは間接的にBmpシグナルを誘導および活性化している可能性が示唆された。
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