本研究においては、歯周組織に存在する幹細胞のin vivoにおける局在および微小環境すなわち幹細胞ニッチを、BrdU投与によるpulse/chase法を用いて免疫組織化学的に同定する。歯周組織における幹細胞の存在はこれまでin vitroの実験より示唆されているが、そのin vivoにおける局在は明らかとされていない。歯周組織の再生および歯の移動メカニズムなどへの幹細胞の関与はこれまで十分検討されておらず、臨床的な重要なこれらの現象を解明する観点からも本研究が及ぼす意義は大きい。 予備実験として、ラット大臼歯歯根および歯槽骨を脱灰せずにOCT compoundに包埋し、タングステンナイフを用いて凍結切片作成を行った。この結果、歯根および歯槽骨は非脱灰包埋状態で7μm厚で切片作成が可能であった。即ち、従来脱灰に伴う抗原性の喪失などにより十分な解析が困難であったこれらの組織を、より詳細に免疫組織化学的に検討する新たな方法として本研究の方法が有用であることが示唆された。 BrdU投与によるpulse/chase法に関しては、マウス臼歯の歯根形成期に当たる生後10日から6日間1日2回BrdUを投与し(pulse)、その後28日あるいは70日間の期間(chase)を置いた後に屠殺・解析する。本プロトコルは標準的な方法として既に多数の先行論文において用いられている。本法を行ったマウスの歯根および歯槽骨を予備実験の方法で切片作成し、免疫組織化学染色によりBrdU陽性のラベル長期保持細胞(LRCs)の局在を今後解析する予定である。さまざまな組織において幹細胞はLRCsに含まれると考えられている。将来的に歯周組織のLRCsの幹細胞としての性質をin vitroの系を用いて明らかにする予定である。
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