研究概要 |
本年度の中心となる研究計画として,CD4^+CD8^+マクロファージによる細胞傷害メカニズムの解明を目的とした解析を開始した。初めに4種類の腫瘍細胞株に対する細胞傷害活性を検討したところ,細胞傷害感受性に顕著な差が認められた。そこで,それらの腫瘍細胞株からmRNAを抽出し,細胞傷害関連分子のプロファイリングを行なったところ,ラットRAET1分子の細胞傷害感受性株での高発現が認められたのに対して,最も抵抗性を示した細胞株ではRAET1分子の発現はほとんど観られなかった。RAET1は活性化型NKレセプターの一つであるNKG2Dのリガンドであることが知られており,NK細胞による標的細胞認識に重要な役割を担っていることがすでに報告されている。そこで,NK細胞と同様に,RAET1分子がCD4^+CD8^+マクロファージによる細胞傷害過程にも関与しているかを検討するため,RAET1の発現ベクターを遺伝子導入した過剰発現細胞株に対する細胞傷害活性を測定した。その結果,非遺伝子導入細胞株と比較して,RAET1分子の遺伝子導入により細胞傷害活性が増強することを確認した。また,以前から本細胞での高発現が認められているgranzymeやperforinなどの細胞傷害因子のinhibitorを用いると,細胞傷害活性がほぼ完全に抑制されることも確認した。これらの結果から,本細胞は活性型NKレセプターを介した標的細胞の認識により,granzyme/perforin依存性の細胞傷害活性を示すことを証明した。これらの結果は,Journal of Immunologyに報告し,腫瘍免疫療法における新しいエフェクター細胞としての有用性が期待されている。
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