研究概要 |
昨年度の研究結果から、ラット脾臓CD4^+CD8^+マクロファージは、NK細胞と同様に、活性型NKレセプターを介して腫瘍細胞表面上のRAET1分子を認識し、granzymeやperforinなどの細胞傷害因子を介した抗腫瘍細胞傷害活性を示すことが明らかとなっており、腫瘍免疫療法における新しいエフェクター細胞としての有用性が期待されている。そこで、本年度は、腫瘍細胞を皮下接種した、担がんラットモデルに対するin vivoでの抗腫瘍活性の検討、ラット脾臓CD4^+CD8^+マクロファージのcDNAマイクロアレイ解析による新たな細胞特異マーカーの抽出、さらには、その結果得られた分子を標的とした、ヒトやマウスにおけるカウンターパートの同定に着手した。その結果、結核死菌をfootpadに免疫することで本細胞群を高頻度に分化させたラットに対して腫瘍細胞を摂取することで、未処置の対照群と比較して顕著に腫瘍増殖が抑制されることを見出した。さらに病理組織学的解析から、腫瘍組織内へのgranzymeを発現した本細胞群の有意な浸潤が観察された。また、cDNAマイクロアレイ解析の結果から、leukocyte immunoglobulin-like receptor, subfamily B(Lilrb)を始めとするいくつかの細胞表面分子の高発現が観察された。しかしながら、定量的PCR法による詳細な解析の結果、結核死菌を免疫したラットから採取したCD4^+CD8^+マクロファージと生理的条件下で採取したものでは、発現パターンが異なっており、ヒトやマウスでのカウンターパートの指標としては、本細胞の分化過程における経過的解析など、さらに詳細な検討を必要とする。一方で各種疾患との関連性も踏まえ、腫瘍性疾患、自己免疫疾患などの様々なマウスモデルを用いて、現在、ヒト・マウスでの本細胞群の同定を目標として解析を進めている。
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