研究概要 |
本年度はケモカインの果たす腎再生への役割を明らかにする目的で,腎虚血再還流および腎原基移植の二つのモデルを用いた実験を進めた。 調に解析が進み,当初の予定を前倒しして検討を進めた。はじめに,虚血再還流後の腎組織にはIP-10/CXCR3が発現している事を確認した。そこで,抗IP-10中和抗体投与の実験をすすめた。腎虚血再還流後の尿細管壊死の程度および炎症細胞浸潤の程度は24-28時間目にかけて著明の増加したが,ケモカインであるIP-10の中和抗体(抗IP-10抗体)投与はその尿細管壊死の程度および炎症細胞浸潤の程度を変えなかった。一方,Ki67陽性尿細管上皮細胞数は虚血再還流後増加し尿細管上皮細胞がさかんに分裂し尿細管上皮細胞の再生に関与している事が示された。この再生の程度は,抗IP-10中和抗体投与により促進されたことから,IP-10が尿細管細胞の増殖に対して搖的に働いている事が示唆された。このようなIP-10の尿細管細胞増殖抑制効果は,培養尿細管上皮細胞での刺激実験および抑制実験からも裏付けられた。 腎原基培養および腎原基移植の実験に関しては,基礎実験を繰り返し行い,腎原基の取り出しのタイミングや培養条件などを決定するためのデータを収集した。次年度に行う予定の腹膜への移植なども予備実験的に開始しているが,移植場所,移植する条件等多くの課題が山積しており今後細かな条件設定を逐一進めて行く予定である。
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