研究概要 |
本年度は,ケモカインの果たす腎再生への役割を明らかにする目的で,培養細胞を用いた検討及び腎原基を用いた検討を行った. 昨年までに得られた虚血再還流後の尿細管上皮再生に対して,IP-10/CXCR3が細胞増殖抑制的に働くという所見を,尿細管上皮細胞を用いた培養実験で確認を行った.尿細管上皮細胞をIFN-γ,TNF-α刺激下で培養し,動物実験で用いたのと同じ抗IP-10中和抗体の作用を検討した.細胞の増殖能はフローサイトメトリーによる細胞増殖期SおよびG2期の細胞の割合,および培養細胞を機械的に除去した後の増殖を見るスクラッチテストで確認した.この作用は中和抗体濃度に依存性に細胞増殖抑制効果を示し,観察時間を変えても同様の所見が得られる事が明らかとなった.さらに,増殖細胞のマーカーであるKi67陽性細胞数の検討でも,中和抗体の増殖抑制効果が確認された.尿細管上皮の増殖能は抗IP-10中和抗体投与下で亢進し,動物実験で得られたIP-10が細胞増殖に対して抑制的に作用すると言う点に矛盾しない結果をえた.これらの所見は今後の治療法や診断法に応用可能と考えられる.以上の結果は学会および論文として発表した. 一方,腎原基を用いた検討では,腎原基の取り出しのタイミングと,腹膜および腸間膜への投与方法が確立した.順調に生着した場合にはレシピエントマウスの血管がドナー腎に入り水腎症の様な状態になる事が分かった.水腎症の解除を目的とした処置が重要である事が明らかとなった.
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