研究概要 |
口腔扁平上皮癌における白金製剤の細胞内輸送能とその感受性との関連を調べることを目的に,がん浸潤様式(山本・小浜分類)の由来が明確な口腔扁平上皮癌8種(HSC-2,HSC-4,OSC-20,OBS-01,OSC-19,OTC-04、HOC313,TSU)をin vitro系の実験に供した。次の系統的研究を行ったので,下記する。) 研究1.抗癌剤シスプラチン(CDDP)感受性の比較 研究2.CDDP暴露し,がん細胞内に蓄積したCDDP濃度の計測 研究3.CDDPの取り込みおよび排出に関わるトランスポーターとして知られているCTR1,ATP7Bのがん細胞における発現の比較検討を行った。 研究1の結果,高度浸潤癌由来細胞株(HOC313,TSU)では,CDDP感受性を低く認めた。 次に研究2のCDDP細胞内蓄積量を計測すると,高度浸潤癌由来細胞では,細胞に蓄積したCDDP量が低かった。この実験結果は,細胞内に蓄積したCDDP量が低いほどCDDPの感受性が低いことを示唆しており,合理的に考えられる。 研究3では,CTR1,ATP7Bの発現を半定量RT-PCRおよびWestern blotting法を用いて,比較検討した。その結果,CTR1の発現は有意な差を認めなかったが,一方ATP7Bの発現に関しては,高度浸潤癌由来細胞においてその発現が強く,低度浸潤癌由来細胞株でその発現が低く認められた。 これらのことより,高度浸潤癌由来細胞株では,低度浸潤癌由来細胞株に比べてCDDPを細胞外に排出するATP7Bが強く働き,CDDP細胞内蓄積量も減少した結果,CDDP低度感受性になったと考えられた。 ATP7Bは口腔扁平上皮癌のCDDP感受性マーカーとして利用できる可能性があり,治療方針に寄与すると考える。また今後はさらに,ATP7Bの耐性メカニズムをさらに解明し,治療に応用できるように研究を進めべきである。
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