悪性骨軟部腫瘍は小児に高頻度で見られ、現在でもなお生命予後不良な疾患であるが、治療へむけた研究は大きく遅れているのが現状である。一方、オーロラキナーゼは細胞分裂における多くの過程に関与し、その過剰発現が、種々のヒトがん組織で観察され、様々な転写活性因子との関与などが報告されている。そのため、オーロラキナーゼとこれら腫瘍関連遺伝子特にSXTSSXとの関連を追及することが本研究の目的である。 まずは、ヒト骨軟部腫瘍におけるオーロラ遺伝子の発現を検証すべく、骨肉腫、滑膜肉腫、ユーイング肉腫などの骨軟部腫瘍の培養細胞、および我々がかねてより採取保管しているヒト骨軟部腫瘍細胞の臨床材料組織切片より、ISOGEN((株)ニッポンジーン)を用いてRNAを抽出し、RT-PCRによりオーロラ遺伝子の発現を確認した。このとき、線維芽細胞(NIH3T3)をコントロールとして用いたが、オーロラの過剰発現は、腫瘍細胞にのみ認められた。よって今後、腫瘍細胞より蛋白を抽出し、ウエスタンブロットで蛋白レベルでの確認を行う予定である。 また、滑膜肉腫発現関連遺伝子SYT/SSXとオーロラキナーゼAおよびBとの関連を、ルシフェラーゼアッセイを用いて解析した。具体的には、オーロラプロモータ部分をPGL3ベクター(Promega:ルシフェラーゼをレポータ遺伝子としてもつベクター)に組み込み、オーロラプロモータの活性化をルシフェラーゼで検出できるプラスミドを作成した。これをCell line Fuji(SYT/SSXをもつ滑膜肉腫細胞)に導入して、ルミノメータにてオーロラの相対的活性化度を測定したところ、上昇を認めた。さらにCell line HT1080(線維芽細胞腫細胞)にSYT/SSXプラスミドとともに導入したところ、empty vectorだけを導入した細胞と比較したところ、有意に活性化の上昇を認めた。今後さらなる解析を進める予定である。
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