歯周組織特異的遺伝子の探索において発見されたFDC-SPは、歯周組織、耳下腺に特異的に発現しており、その分子構造は唾液成分であるスタテリンや腸管粘膜免疫において重要な機能を果たしているデフェンシンと類似していることが示され、新規抗菌ペプチドとして生体防御に関与している可能性が示唆されている。しかし、その機能は未だ明らかにされていない。そこで、新規抗菌タンパク質(FDC-SP)の機能解析の手がかりとして、まず歯周組織および唾液腺の発生段階におけるFDC-SPの発現の検索を行った。胎生18日および8週齢のICRマウスより麻酔下にて歯胚または歯周組織を摘出後、RNA調製を行った。また、同様に胎生18日および4週齢のICRマウスより唾液腺を摘出後、RNA調製を行った。その後RT-PCRにより、歯胚および歯周組織と唾液腺の発生段階における発現の有無を解析した。その結果、胎生18日においては、歯胚、唾液腺ともに、FDC-SPはほとんど発現が認められなかったが、8週齢歯周組織および4週齢唾液腺においては強い発現が認められた。さらに、8週齢のマウスの遊離歯肉および歯槽粘膜を摘出し、FDC-SP発現を比較検討したところ、遊離歯肉には強い発現が認められたが、歯槽粘膜には発現が認められなかった。以上の結果より、FDC-SPは胎生期においては歯胚および唾液腺には発現せず、出生後に発現すること、口腔内においてその発現は局在性があることが示された。現在、FDC-SPの発現を詳細に探索するため、in situhybridization解析を行いさらなる検討を続けており、FDC-SPの機能解析をすすめていく予定である。
|