対象被験者は、統合失調症患者、第一度近親者、健常被験者の3群で、それぞれ30名前後を予定していた。昨年度より被験者のMRI撮像、神経心理学的テストを開始した。昨年度は、患者家族のデータ収集が思うように進まなかったが、MRI撮像として、3T-MRIにてT1-MPRAGE、T2強調画像撮像、拡散テンソル画像撮像、機能的MRI画像を撮像した。世界水準での画像技術の進歩、また我々の技術も向上したため、新たに機能的MRI画像、多チャンネルヘッドコイルを用いた拡散テンソル画像にも着手した。昨年度はこれらの技術を主に統合失調症患者に応用した。機能的MRI画像を用い、社会認知課題を行い、賦活される能領域を統合失調症患者で調べた。現在、学会発表準備中である。このような課題を用いた統合失調症研究は世界的に見ても数が少ない。今年度はさらに患者家族にも応用する予定である。神経心理学的検査の分野でも世界的な知見の集積は目覚しく、特に社会認知能力検査には優れた検査が入手可能となった。昨年度、我々は、統合失調症患者に対し、共感能力を評価するInterpersonal Reactivity Index(IRI)、他者の心の状態を推定する際に必要とされる能力を評価するEye Test、社会的失言検出課題により社会的認知機能を評価するFaux Pas Recognition Testなどを行った。特に昨年度は統合失調症患者のIRIのデータ収集に力を入れた(論文投稿中)。この種の課題を統合失調症に応用する研究はほとんどない。また新しい画像統計学的解析方法として、従来行われていたSPMという解析ソフトの他にも、FSLという解析ソフトを用いて、白質病変の異常を解析しようと試みた。統合失調症患者と健常被験者で比較を行い、現在、論文準備中である。
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