研究概要 |
「ドナー不足」に対する打開策として、心臓死ドナー(donation after cardiac death, DCD)肺を用いた肺移植がある。DCDでは心停止後の温虚血による臓器傷害が甚大であるが、吸入による薬物投与などの手法を開発することで、傷害肺の有効利用が可能になる。平成19年度の実験結果をもとに、平成20年度に、申請者は、以下一連の研究を行った。(1)rat肺ex vivo潅流モデルを用いて、さらに優れた肺保護作用を有する薬剤の検索(2)新しいDDSを用いた薬剤の吸入効率改善についての検討(3)大動物ex vivo肺潅流モデルの確立 (1) 細胞内のcAMP,cGMPを維持するために、PDE阻害剤であるMilrinoneやhANPに着目した。また、radical scavengerの観点からthioredoxinの吸入についても検討を行った。これら薬剤の吸入投与が、温虚血再潅流傷害に与える影響を上記モデルを用いて明確に示した。 (2) 新規ナノパーティクルであるCHPを用いて、麻酔下のratにおいて、種々の薬剤や蛍光物質であるQuantum dotを内包したCHPおよびその誘導体の吸入を行った。種々の薬剤や蛍光物質の血中濃度や肺組織中の分布状況などについて、蛍光顕微鏡を用いて測定し、結果を検討中である。 (3) 人工心肺装置および回路・人工呼吸器などを整備し、屠殺場からのブタ(115kg程度)を用いた大動物ex vivo肺潅流モデルを確立した。その後、肺保存液の違いによる、肺の保存効果について実験を行いその結果を検討中である。さらに、今後、還流後の肺移植実験を継続して行い、実際のDCD肺移植臨床につなげるtranslational researchを計画中である。
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