研究課題
●本年度は昨年度に確立した国産クラウン系ミニブタ肺温虚血再灌流障害(IRI)モデルを用い一酸化炭素(CO)によるIRI抑制効果についての詳細な検討を進め(目的1)。更に臨床に即した実際の肺移植症例を用いて、COを投与することによるIRI抑制効果および特に慢性拒絶に焦点をあてた拒絶反応抑制効果について検討した(目的2)。なお目的2ではIRIという非免疫学的因子が慢性拒絶病変進展に及ぼす影響を免疫学的因子の関わりをできるだけ排除した状態で評価するため、MHC適合間(マイナー抗原不適合)肺移植でドナーに温虚血時間を設けIRIを惹起した。●目的1.電顕を含めた詳細な評価により、250ppmCO吸入によるIRI抑制効果が特に血管内皮の保護、炎症性サイトカインの産生抑制を介したものであることを示し、この結果を論文投稿中した。●目的2.MHC適合間の高容量FK506投与下左肺移植モデルでは、コントロール群2症例ではドナー肺は術後1年以上にわたり拒絶されなかったが、ドナー肺に90分の温虚血を設けた群では3例中1例で肺は完全拒絶されたが残り2例ではグラフトは拒絶されなかった。このように当初計画していた本モデルではグラフト拒絶に関して均一な結果が得られなかったため、温虚血により誘導されるIRIが非免疫学的な因子として慢性拒絶病変進展に対して影響を与えるかという点を評価することは困難であった。この結果をうけ、CO吸入が実際の肺移植症例でのIRI、グラフト生存期間及び慢性拒絶病変進展に及ぼす効果を評価する実験としては当初計画したMHC適合間ではなく、MHC完全不適合間ミニブタ左肺移植モデルで行うこととした。MHC完全不適合肺移植では全例グラフト肺は術後63日以内に完全拒絶されるのに対し、ドナー及びレシピエントに手術時に250ppmのCO吸入を行うことによりグラフト肺が90日生存するというpreliminary resultを得た。あわせて放射性同位元素を用いずにブタT細胞の反応性を評価する手法を確立し、論文報告した。
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