研究課題
平成19年度は、研究計画書に基づき、(1)薬理学的p21抑制が、尿路上皮癌細胞・正常尿路上皮細胞における抗癌剤誘導性細胞死に与える影響、(2)尿路上皮発癌におけるTBP2経路の関与とp21発現制御における役割の解明、の2点について実験と解析を行ってきた。(1)については、主にChinese herb由来の化学物質であるtriptolideを用い、そのp53転写機能・およびp21発現制御に与える影響と分子機序について、京都府立医大池川研究室とともに、プロテオミクスの手法を用い解析を行った。この過程で、Triptolideが、p53の転写共役因子のひとつであるGSK-3βが重要な役割を果たしていることを解明しえた。癌細胞に対する同薬剤の負荷により、この転写共役因子のリン酸化を介して、p21発現の減少が生じること、このp21発現低下のため、シスプラチン誘導性細胞死の増強が生じることを明らかにすることができた。(2)の尿路上皮発癌におけるTBP2経路の関与の検討については、本学の淀井研究室より、TBP2ノックアウトマウスの供与を受けることができるようになり、本年度は同マウスを用いた膀胱化学発癌実験を行ってきた。同ノックアウトマウスにおいては、発癌物質のひとつであるBBNの経口摂取にともない、正常マウスに比較して非常に早期に、またより悪性度の高い尿路上皮癌が多発し得ることをあきらかにすることができた。現在これら腫瘍組織から採取した細胞の株化をすすめており、成功し次第抗癌剤誘導性アポトーシス感受性の実験に移りたいと考えている。これまで我々は、ヒトおよびマウス由来尿路上皮癌細胞株においてTBP2過剰発現亜株を作成、且つこれらの細胞においては抗癌剤誘導性細胞死感受性の著しい低下が認められることを確認してきている。これらの実験系とともに、TBP2発現変化とp21,p27発現の影響、およびこれら細胞周期関連蛋白発現の変化が細胞死感受性に与える影響を引き続き検討してゆきたい。
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