研究課題
平成20年度は研究計画書に基づき、(1)薬理学的p21抑制が尿路上皮癌細胞における抗癌剤誘導性細胞死に与える影響、(2)尿路上皮発癌におけるTBP2経路の関与と、p21発現制御におけるTBP2関連分子の役割、の2点について実験と解析を行ってきた。(1)については主にChinese herb由来の化学物質であるtriptolideを用い、そのp53転写機能・およびp21発現制御に与える影響と分子機序について、プロテオミクスの手法を用い解析を行った。この過程で、Triptolideが、p53の転写共役因子のひとつであるGSK-3βが重要な役割を果たしていることを解明しえた。癌細胞に対するTriptolideの負荷により、GSK-3βのリン酸化を介してp21発現の減少が生じること、さらにこのp21発現低下のためシスプラチン誘導性細胞死の増強が生じることを明らかにすることができた。(2)の尿路上皮発癌におけるTBP2経路の関与については、本学の淀井研究室よりTBP2ノックアウトマウスの供与を受け、同マウスを用いた膀胱化学発癌実験を行ってきた。TBP2ノックアウトマウスは発癌物質であるBBNの経口摂取により、正常マウスに比べ非常に早期に、悪性度の高い尿路上皮癌が発生することがあきらかになった。これらの腫瘍組織から、発癌に差異を与えたシグナル経路の解析をすすめるとともに、これらの発癌経路そのものに起因する内因性の抗癌剤耐性についても解析を進めている。我々は、ヒト尿路上皮癌細胞株においてTBP2過剰発現亜株を作成し、これらの細胞においては抗癌剤誘導性細胞死感受性の低下が認められることを確認してきている。これらの実験系とともに、TBP2発現変化とp21,p27発現の影響、およびこれら細胞周期関連蛋白発現の変化が細胞死感受性に与える影響について引き続き検討をしている。
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