遺伝子組み換えヒト骨形成因子(rhBMP-2)は、異所性に骨誘導することが出来る蛋白性因子であり、その作用は極めて強く、臨床において極めて応用範囲が広い。しかし、十分な骨を結誘導するためには大量のrh-BMP2が必要であり極めて高額な医療となる。また、臨床では低浸襲で確実な再建で、最終的には自己の生体に置換されることが理想とされている。そこで今回の研究では、以前からの遺伝子治療の手法で、安価で極めて強力な遺伝子導入効率を持つBMP-2発現アデノウイルスベクターの利用を考えた。しかし、それだけでは宿主の免疫応答反応により正常の免疫機能を持つ動物での骨誘導が出来ないため、少量の免疫抑制剤の併用し、極めて安価で簡単、迅速に十分な骨誘導を行うことを目的とした。また、連続性のない骨欠損部の再建をするため、骨誘導が完了するまでの期間、周囲の形熊維持のために吸収性材料(ポリ乳酸とアテロペプタイドI型コラーゲンの複合体)を併用することを検討した。今年度は、BMP2発現アデノウイルスベクターの調整と担体の調整、作成を行った。コントロール実験にて、ラットの下腿部に連続性のない骨欠損を形成し、ウイルス液と少量の免疫抑制剤の注入し、骨形成の状態を確認しつつ担体の調整を行った。現在、術後1ヶ月においてX線学的、組織学的に骨形成が認められることを確認した。今後は、再建された骨の評価(骨強度、骨密度の測定)、担体の吸収過程についての経時的評価について検討したいと考えている。
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