本年度は「炎症性サイトカインがin vitroにて神経細胞に及ぼす影響とそのメカニズムの解明」について研究を行った。まずラットより中枢神経細胞として小脳顆粒細胞を、末梢神経細胞として後根神経節細胞を採取し初代培養を行った。培養液中にIL-1βを単独で添加したところ、それぞれの神経細胞において軸索伸展などの影響は認められなかった。ところが軸索伸展阻害物質であるMAGをIL-1βと同時に添加したところ、MAGの存在下においても、IL-1βはその影響を打ち消すことがわかった。このことからIL-1βはMAGなどの軸索伸展阻害物質の影響をブロックし、軸索を伸展させることが解明された。MAGは低分子量G蛋白質の一つであるRhoを活性化するが、IL-1βはp38MAPKを介してRhoをブロックするということがわかった。また生体内での現象も解明するため、ラットの坐骨神経損傷モデルを作製し、IL-1βの発現を確認したところ、損傷部周囲にIL-1βの発現が上昇することもわかった。損傷後24時間をピークとして、7日後まで上昇していることが免疫染色およびウエスタンブロッティングで確認できた。このことから坐骨神経損傷後には、損傷部周囲に一過性にIL-1βの発現が上昇するがわかった。これによりMAGなどの軸索伸展阻害物質の影響をブロックすることにより神経細胞の軸索伸展作用が促進され、末梢神経損傷後の軸索再生に寄与する可能性が示唆された。
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