1.活性酸素種(ROS)反応性蛍光色素およびフローサイトメトリーによるROS発生解析 前年度に引き続き、陽子線治療の主要対象腫瘍の培養細胞(H1299:肺癌、HMV-2:粘膜悪性黒色腫)に対してX線および陽子線を照射した後にフローサイトメトリーによるROS発生解析を行った。標識蛍光色素にはCM-H_2DCFDAを使用した。前年度の研究で、PEITC1μM併用はX線よりも陽子線照射においてより効率よくROSを誘導することが分かったが、それが抗酸化物質(ROSを消去する)の添加でキャンセルされるのかどうかを調べるために代表的な抗酸化物質として知られるN-アセチルシステイン(NAC)を用いた。PEITCなしのNAC0.3〜1mM単独添加にて、ベース(照射なし)のROS発生量は変わらず、4Gyを照射してもROS発生量の増加は認めなかったが、8Gy照射ではROS発生量の増加が見られた(1mMの方が増加を抑えられた)。3mM添加では、興味深いことに、ベースのROS発生量が増加した上に、照射後のROS発生抑制効果も弱かった。以上の結果からNAC併用は0.3〜1mMが至適と考え、PEITCと両方併用した場合のROS発生を解析中である。また、3mM併用でむしろROS発生量が増加するという従来の報告とは逆の結果が出たことに関して、他の手法を用いて探索中である。 2.本年度の研究の意義 抗酸化物質の低濃度併用は照射後のROS発生量を抑えるが、高濃度になるとむしろROS発生量を増加させる。臨床応用につなげるためには血中濃度を至適に保つ工夫が必要である。
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