MTXを用いたプロトコールで治療を受けた骨肉腫患者46人を対象にしてMTX投与後の血中濃度および副作用とSNPとの関連を検討した。また42人を対象に手術時の壊死率とSNPとの関速を検討した。肝機能障害grade3以上の出現頻度がRFC1の80alleleにAAを持つ群で有意に高かった(p=0.018)。MTX投与後の血中濃度、抗腫瘍効果とSNPの間に関連を認めなかった。肝機能障害はMTXの比較的多い副作用の一つであり、特定のSNPで肝機能障害の発生頻度が高かったことから、MTX投与時に肝機能障害の出現が予測しやすくなり、安全に投与するための指標となりえる。MTXを含むプロトコールで治療した骨肉腫患者46人における予後とSNPの関連について検討した。MTHFR677alleleにCCを持つ群で全生存率(p=0.0132)、無病生存率(p=0.0083)ともに有意に予後が悪い結果であった。RFCIついては予後の差を認めなかった。これまで骨肉腫の予後に関与するSNPの報告はなく、MTXを用いた治療における骨肉腫患者の予後を推測するのにMTHFR677alleleが有用である可能性が示唆された。 RFCIは葉酸とMTXを細胞内へと輸送するトランスポーターで、この遺伝子のSNPが肝機能障害と関連を認めたことから、葉酸やMTXの細胞内への輸送が変化することにより肝障害が引き起こされる可能性が考えられた。またMTXは葉酸代謝阻害剤として抗腫瘍効果を発揮するため、葉酸代謝酵素であるMTHFRのSNPが予後と関連することも興味深い。MTHFRのallele677にCCを持つ腫瘍細胞では、MTXの効果が阻害する機序が働くのであれば、allele677を変更することで、効果を上げたり、耐性を回避したりすることができる可能性がある。今回の研究では術前化学療法後の組織学的効果とSNPとの関連には有意差を認めなかったが、これはMTX単剤でなく、シスプラチンやアドリアマイシンを併用した効果をみているからと考えられた。今後はこのSNPを治療前に検討することで、予後の悪い群のプロトコールを変更するなどのテーラーメイドへと応用が期待される。
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