本研究は当研究室にて保有している口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-2、HSC-3、HNt、IH、B88)に含まれる癌幹細胞の同定と、その表現形質の解析を主たる研究目標とした。実験には造腫瘍能の異なる口腔扁平上皮癌細胞株を用いた。これらの細胞に存在する癌幹細胞を、既知のマーカーである(1)CD133陽性、(2)CD44陽性、(3)CD44陽性/CD24陰性を指標にflow cytometryを用いて確認し、癌幹細胞数の割合とヌードマウス背部皮下における造腫瘍能との関連性を検討した。前年度に解析した、CD133陽性細胞は、検討したすべての細胞でごく少数(0.1〜3.9%)しか存在しておらず、造腫瘍能との関連性も認められなかったが、CD44陽性細胞(またはCD44陽性/CD24陰性細胞)の割合は、ヌードマウス背部皮下で造腫瘍能の高いB88細胞では100%(82%)と高値を示したが、造腫瘍能が中等度であるHSC-2とHSC-3細胞ではそれぞれ37.3%(35.2%)と313%(23%)、造腫瘍能の低いHNtとIH細胞ではそれぞれ13.1%(12%)と19%(10.8%)であり、癌細胞株の造腫瘍能を反映していた。以上のことから、口腔扁平上皮癌細胞における癌幹細胞は、CD44陽性細胞群を指標に分離できる可能性が示唆された。そこで、分離された細胞群についての培養条件を検討したが、癌幹細胞様のphenotypeを維持させる至適培養条件が得られなかったため、in vivo解析を進めているところである。つまり、各種癌細胞株からMACSにて分離されたCD44陽性/CD24陰性細胞群を、ヌードマウス(生後8週齢)咬筋内に移植し、移植部位における腫瘍形成能およびリンパ節転移能の有無、遠隔転移の有無を病理組織学的に解析中である。
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