研究課題
若手研究(スタートアップ)
「肝内胆管癌においてE-cadherin転写抑制因子がEMTを誘導し, その結果として胆管癌の浸潤転移に重要な役割を果たしている」という仮説を証明するために研究を行った。肝内胆管癌切除症例46例においてその臨床病理学的因子を検討しデータベースを作成した。それぞれの切除標本よりDNA、RNAを抽出し遺伝子ライブラリーを作成した。免疫組織学的染色を行うために癌部非癌部のプレパラートを作成した。肝内胆管癌におけるEMTの指標であるE-cadherinの発現を免疫組織学的に解析した。抗E-cadherin抗体を用いた免疫組織染色を行ったところ、46例中21例(45.7%)において非癌部の正常肝組織に比べて癌部で明らかにE-cadherinの発現が減弱していることが判明した。さらにEMTを誘導する機序を解明するために、E-cadherin転写抑制因子であるSnailおよびTwistの発現を同一症例同一部位において免疫組織学的に検討した。Snailは46例中9例(19.6%)において癌部の核内に異常高発現がみられた。一方、Twistは46例中15例(32.6%)に腫瘍細胞の核内異常高発現が見られた。Twist高発現腫瘍では有意にE-cadherin発現が減弱していることが明らかになり(p<0.05)、Twist発現が肝内胆管癌におけるEMTに関与していることが示唆された。臨床病理学的因子との相関の検討では、Snail高発現群においては術前腫瘍マーカーであるCEA・CA19-9が53.1ng/ml・27289U/mlとSnail非発現群(2.6ng/ml・2933U/ml)と比較して有意に高いことが明らかになり(p<0.05)、腫瘍の悪性度と関連している可能性が示唆された。肝内胆管癌の重要な悪性度因子であるリンパ節転移や予後に関してはEMT関連分子の発現の有無との間に有意な関連を認めなかったが、今後症例数の蓄積が必要であると考えられた。肝内胆管癌においてEMTがその腫瘍の悪性度に関与している可能性が示唆されたため、今後はさらに肝内胆管癌細胞レベルにおける機能解析を進めていく必要がある。
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