本研究ではヒト歯根膜組織再生研究に不可欠な歯根膜組織中の組織幹細胞を利用しその細胞が分化、増殖するメカニズムを明らかにすることを目的としている。1)ヒト正常歯根.細胞に由来し組織幹細胞の特徴を有するクローン細胞株の樹立2)クローン細胞株の分化に伴う遺伝子変化のモニタリングを主な自的としている。 1)に関して、申請者が以前樹立したヒト歯根.クローン細胞株のなかで、組織幹細胞のマーカー(STRO-1およびCD146)を発現し、かつin vitroにて多分化能(骨芽細胞分化能、脂肪細胞分化能)を有し、またβ-TCPと共に免疫不全マウス皮下に8週間移植することによって分化するクローン細胞株(1-11細胞株)を単離した。さらに、この移植片からヒト由来である歯根膜組織関連遺伝子の上昇を確認している。(Fujii et al. J Cell Physiol 215:743-749、2008)また、1-11細胞株は骨髄間質系前駆細胞マーカーとして知られているCD13、CD29、CD44、CD90、CD105、およびCD166を発現していることが明らかとなった。 2)に関して、分化を促進する因子の決定、およびその分化に伴う遺伝子発現変化について検証した。歯根膜細胞分化促進因子として知られているエムドゲインおよび塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を1-11細胞株に添加後、SCIDマウスに移植し1-11細胞株の分化能および遺伝子発現について検討した。その結果、エムドゲイン添加群では1-11細胞株の分化能に影響を与えないことが明らかになった。一方、bFGF添加群では1-11細胞株移植片において歯根組織関連遺伝子の上昇を確認しているものの、形態学的には分化能に影響を与える群とあたえない群が存在した。現在、分化を促進することの可能なbFGF濃度の決定を行っている。
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