研究概要 |
腎におけるレニン-アンジオテンシン系は,血圧循環調節や水・電解質代謝の制御および高血圧発症・維持のために重要である.よって、本年度は、まず、主に正常血圧マウス腎でのATRAPの局所発現分布およびマウス腎での発現調節についての検討をおこなった。すでに特異的にATRAP蛋白を認識するポリクローナル抗マウスATRAP抗体を作製しており、この抗体を用いて正常血圧マウス(c57BL6)の腎における内在性ATRAPの局所発現解析をおこない、腎血管壁,糸球体,尿細管各セグメントにおける発現レベルについて解析した。同時にATRAP mRNAについてin situ hybridization法により検討した。これらの解析結果からはATRAPとAT1受容体発現部位との高い共局在性についても明らかになった。 また、腎レニン・アンジオテンシン系は腎の発生・形態形成にも関与しているために、腎の発生段階におけるATRAPの局所発現分布・変動と腎の形態形成との関連性について調べた。また、生体の塩分摂取量の変動や循環レニン・アンジオテンシン系の活性状態に応じて、腎でのAT1受容体の発現が変化して腎の循環生理作用や水電解質代謝機能を制御することが明らかにされているために、成体マウスに対して塩分負荷あるいは塩分制限をした場合、および皮下の浸透圧ポンプにて持続的にアンジオテンシンIIを投与した場合の、腎でのATRAPの局所発現分布・変動およびAT1受容体の発現調節との比較検討を行った.その結果、腎におけるATRAPの発現は塩分摂取量やアンジオテンシンII投与によってその発現量が変化し、腎における相対的なATRAP/AT1受容体発現量比が腎におけるNa+再吸収や血圧制御に関与している可能性が明らかになった。
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