研究概要 |
カルボニルストレスに対する生体防御システムの一つとして反応性カルボニル化合物を減少させる酵素系に着目し、カルボニル化合物還元代謝酵素の網羅的解析を行った。以下に今年度明らかにした点について列挙する。1.AKRIB13は反応性カルボニル化合物を効率よく還元し、特に3-deoxyglucosoneに対するKm値、触媒効率は主酵素として知られているARに匹敵した。AKR1B13は線維芽細胞成長因子(FGF)誘導性のAKR1B8と95%の相同性を示す。そこで、ラット前立腺上皮細胞、腎臓上皮細胞を用いて、FGF-1、FGF-2、ステロイドによる発現誘導を検討してみたが、発現誘導は確認できなかった。一方、数μMの過酸化水素や1,4-naphthoquinoneで優位にその発現は上昇した。2.ヒトCBR4がN末端の移行シグナルの切断を行わずにミトコンドリアに局在するキノン還元酵素であることを明らかにした。さらに9,10-phenanthrenequinone(9,10-PQ)還元時には、スーパーオキシドが産生され、CBR4過剰発現細胞においてはアポトーシスがより強まったことから、これらo-キノンの毒性発現に関与する可能性も示唆された。3.ペルオキシソーム局在性酵素であるDHRS4は、芳香族ケトンに加え、9,10-PQなどのα-ジカルボニル化合物を還元した。しかし、CBR4とは異なり、ex vivoでの9,10-PQ毒性への関与は確認できなかった。これはペルオキシソームに存在するカタラーゼやスーパーオキシドジスムターゼの活性酸素除去効果が原因と考えられた。以上より、これら還元酵素は反応性カルボニル化合物の解毒において、ただ強力な還元能を発揮するだけでなく、カルボニル化合物によって発現を誘導されることで、さらに効果的に生体を防御していることが明らかとなった。
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