平成19年度は、まず、実験目的に至適なES細胞由来の移植細胞の調整法を検討した。 骨髄間質細胞との共同移植による瘍形成抑制効果の判定のためには。ES細胞由来の移植細胞分画には適度な未分化ES細胞を含む必要があるため、濃度調節により神経分化効率が大きく変化するレチノイン酸誘導法を採用した。神経幹細胞誘導に至適なレチノイン酸濃度は5x10^<-7>Mであったが、あえて低濃度5x10^<-9>Mを採用することで、未分化ES細胞の混在するネスチン陽性細胞分画をES細胞由来移植細胞分画を調整した。このES細胞由来移植細胞を脊髄損傷モデルに移植したところ高率に移植部位で腫瘍形成することを確認した。 次に、in vitro実験において、骨髄間質幹細胞と共培養がES細胞由来移植細胞分画の未分化ES細胞に与える影響について検討した。共培養により、ES細胞由来移植細胞分画に発現の認められたOct3/4、SOX2、Utf1、Nanog、ERasなどの未分化マーカーは消失することが判明した。また、骨髄間質幹細胞には、GDNF、NGF、BDNFなどの発現神経栄養因子の遺伝子および蛋白発現も確認できたことから、ES細胞由来移植細胞分画に残存する未分化ES細胞の神経分化を促進している可能性が示唆された。 これらのin vitroの成績は、ES細胞療法における腫瘍形成防止の方策として自己骨髄間質幹細胞共移植法の可能性を提示するものである。次年度は、脊髄損傷モデルマウスにおいて、ES細胞由来移植細胞および骨髄間質幹細胞の共移植を実施し、腫瘍形成抑制効果を検討する。
|