研究概要 |
骨延長術は骨の造成のみならず周囲の骨膜、筋、神経脈管などの軟組織も同時に延長されることから,従来の骨欠損部位に対する自家骨移植術にはない利点を有する.しかしながら骨移植法に比べ治療期間の長期化が大きな欠点とされている.近年,骨延長術の治療期間の短期化を目的とした骨硬化促進の研究がなされている.骨硬化期間に骨延長部へ刺激を与え,創傷治癒促進,骨硬化促進を獲得する方法である.この刺激としては,骨形成因子(BMP, bFGFなど)の局所注入,低出力超音波刺激(LIPUS)などがある.LIPUSでは安定した骨硬化促進作用を確認できたが,bFGFの注入に関しては,局所に安定して作用する担体を必要とし,結果が不安定であった.申請者は顎骨に骨延長術を行い,延長部骨芽細胞にbFGF発現プラスミドを超音波遺伝子導入法で導入し,創傷治癒および骨硬化を促進することにより,骨延長期間を短縮できると考えた 平成20年度は,臨床への応用を目指し,動物実験での成績評価を行った.まず,Wister系ラットを用い,全身麻酔下に下顎骨皮質骨骨切り後,自作の延長装置を装着し,ラット下顎骨延長モデルを作成した.実験動物を対照群(単純骨延長群),超音波単独照射群,bFGF発現プラスミド単独投与群,bFGF発現プラスミド投与+超音波遺伝子導入群の四群に分けた.術後7日間の待機期間の後,0.5mm/日の割合で骨延長を行った.総延長距離は3.5mmとし,7日間の延長を行う.延長終了後,延長部に対して以下の刺激を加える.実験群:延長終了時,延長部にナノバブル/bFGF遺伝子混合溶液をインジェクションし,ソニトロン2000の超音波プローブを当て超音波照射した.以上の経過で延長終了後1週,2週,4週で安楽死させ,試料を採取した.RT-PCR法にて仮骨周囲組織にbFGF遺伝子の発現が観察され,bFGFタンパクも検出された.組織学的には,HE染色およびToluidine Blue染色にて導入群仮骨に軟骨の消失と骨架橋が見られ,治癒の促進が観察された.
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