ヒカゲノカズラ科植物に含有されるアルカロイド類(リコポジウムアルカロイド)は、生合成経路の未解明な部分が多く、推定はされていても化学的根拠に乏しいものが大多数である。そこで今回の研究では、リコポジウムアルカロイドの生合成に関する化学的根拠の提出を目的とし、成分探索研究によるアプローチと、合成化学的アプローチの2方向からの研究を展開している。以下、本年度の研究成果について述べる。 2007年に富山県にて採集したヒカゲノカズラのアルカロイド成分を探索し、現在までに12種の単離化合物を得た。その結果、本植物はごく限られた骨格の化合物のみを生産しており、さらに単離した化合物の多くはアセチル基を有することが明らかとなった。現段階で未分離の成分に関しても、同様の特徴があるか興味が持たれる。今後、新規化合物と推定したアルカロイドや現段階で構造未知の化合物の精密構造解析を行うともに、さらに詳細な成分探索を進めていく。 ヒカゲノカズラの成分研究に加え、千葉県にて採集したヒカゲノカズラ科植物トウゲシバのアルカロイド分画に関して微量アルカロイド成分を探索し、4種の新規化合物の単離・構造解析した。4種の新規アルカロイドのうち1種は報告例のない4環性骨格を有しており、生合成経路を化学的観点から考察する上で、重要な化合物になりうると考えている。 ヒカゲノカズラに続く成分研究の素材として、栃木県に産するヒカゲノカズラ科植物2種を採集した。今後はこれらのアルカロイド成分の検索も順次行い、生合成経路を解明する糸口となる化合物の探索、また化学的、医薬化学的研究の素材として有用な化合物を探索する予定である。 さらにリコポジウムアルカロイドの生合成前躯体として知られるペレチエリンを大量に合成し、推定生合成中間体の合成を検討している。
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