ヒカゲノカズラ科植物に含有されるアルカロイド類(リコポジウムアルカロイド)は、生合成経路の未解明な部分が多く、推定はされていても化学的根拠に乏しいものが大多数である。今回の研究では、リコポジウムアルカロイドの生合成に関する化学的根拠の提出を目的とし、成分探索研究によるアプローチと、合成化学的アプローチの2方向からの研究を展開している。以下、本年度の研究成果(1〜4)について述べる。 1.富山県産ヒカゲノカズラのアルカロイド成分の探索研究 富山県にて採集したヒカゲノカズラのアルカロイド成分を探索し、新規化合物4種を含む13種のアルカロイド類を得た。これらの構造はごく限られた基本骨格を有していたほか、多くの化合物は水酸基がアセチル化されており、生育環境により生合成経路に変化があるものと考えられる。別の産地のヒカゲノカズラの化学成分にも興味が持たれる。 2.千葉県産トウゲシバのアルカロイド成分の探索研究 千葉県にて採集したトウゲシバのアルカロイド成分を探索し、上記の富山県産ヒカゲノカズラより得られた新規化合物と類似構造を有する新規アルカロイドを得た。本化合物の構造はスペクトル解析と化学変換により明らかとした。 3.栃木県産トウゲシバのアルカロイド成分の探索研究 栃木県にて採集したトウゲシバのアルカロイド成分の探索を行い、現在までに既知化合物5種の構造を明らかとした。現時点で構造未知のアルカロイドが多数あり、スペクトル解析と化学変換による構造解析を行っている。 4.リコポジウムアルカロイド生合成における鍵中間体の合成研究 リコポジウムアルカロイドの生合成前駆体として知られるペレチエリンを大量に合成し、推定生合成中間体の合成を検討している。
|