レプトスピラのヘモグロビン走化条件を確立した。ハムスターへの感染実験とガラスキャピラリを用いた走化性試験により、病原性を有する株の一部が鉄欠乏状態においてヘモグロビンに対する走化性を有することがわかった。ヘモグロビンに対して走化性を示したレプトスピラより、菌体外膜画分を抽出した。抽出した外膜蛋白質をヘモグロビン固相化カラムに結合させ、pH4.0の酸性条件、及び6M塩酸グアニジンで溶出した。各溶出画分の二次元電気泳動を行ったところ、酢酸緩衝液溶出画分では9個、塩酸グアニジン溶出画分では23個のスポットを得た。塩酸グアニジン溶出画分のスポットのうち、ひとつをすでにLipL32と同定しており、組み換えLipL32(rLipL32)発現・精製系を確立し、抗LipL32モノクローナル抗体を作成している。ELISAの系により固相化Hbに対するrLipL32の乖離定数を求めた(K_<dapp>=1.20±0.06(μM))。最近LipL32が細胞外マトリクス(ECM)に結合すること報告されたが、その結合はHbに対する結合よりも弱いものであった。またrLipL32はアポHbに対しても、Hbと同等以上の結合性を示したのに対し、ヘミンに対して結合せず、LipL32はHbの蛋白質部分を認識していることが明らかとなった。Hb、ヘミン、すでにLipL32との結合性が報告されているフィプロネクチン(Fn)N末30kDaフラグメント、及び45kDaフラグメントをrLipL32と混和しCDスペクトルを測定したところ、Hb、Fnの各フラグメントでは、楕円率の変化が認められた。対して、ヘミンではスペクトル変化が観察されなかった。結合時のCDスペクトル変化がHbとECMで類似することから、LipL32によるHbの認識はヘミンの存在に依存せず、ECMに対する認識機構と同様であることが示唆された。
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