黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は代表的なグラム陰性菌であり、その感染は局所的な炎症から時折致死的な敗血症を引き起こす。その生体感染防御として、第一にマクロファージによる細菌の貧食および炎症の惹起があげられるが、特に貧食機構の分子メカニズムについては未だに不明な点が多く残されている。そこで我々は、レトロウイルスの発現クローニング法により、S.aureusに直接結合するマクロファージレセプターの探索を行った。その結果、我々はPaired Ig-like receptor-B(PIR-B)をS.aureusの新規マクロファージレセプターとして同定した。PIR-Bは、その細胞外領域のIg-like domain2を介して、S.aureusに直接結合し、TLRを介した炎症反応を抑制することが判明した。PIR-Bはマクロファージ以外にもマスト細胞表面上にも発現していることが報告されており、また最近マスト細胞はアレルギーのみならず、細菌感染にも関与することが明らかにされつつある。そこで次に我々はマスト細胞のS.aureus認識にPIR-Bが関与するかについて検討を行った。その結果、マスト細胞のTRITC-S.aureusの結合は、抗PIRモノクローナル抗体により約50%阻害されたことから、PIR-Bはマクロファージのみならず、マスト細胞の細菌認識に関与していることが示唆された。現在、PIR-B欠損マウスを用いて、in vivoでのPIR-Bの細菌感染防御における役割を検討中である。
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