(1)研究の学術的背景骨粗鬆症は、老化および閉経後に起こることが知られている。閉経に伴う骨粗鬆症においては、女性ホルモンであるエストロゲンの劇的な減少によって、骨形成一骨吸収ともに充進されるが、そのバランスが破綻し、骨吸収優位の方向へ導かれる。閉経モデルマウスにおける骨組織でのニトロ化の充進や炎症が関与する骨粗鬆症にNOが関与しているなどの報告から、骨粗鬆症にタンパク質ニトロ化による酸化傷害が関与し、それをエストロゲンが制御していると考えた。我々は既に、外因性活性窒素種により処理した神経様モデル細胞における、6-ニトロトリプトファン含有たんぱく質の同定を、独自の抗体と組み合わせたプロテオーム解析により行った。本年度は、女性ホルモン様物質のうち、トリブチル錫に焦点を当て、骨芽細胞への作用について解析し、p38MAP kinaseのリン酸化減少の抑制による骨形成促進を見だした。また、今まで不明であった内因性活性窒素種による6-ニトロトリプトファンの形成について、炎症のモデルとして多用されるLPS/IFN-γ刺激RAW細胞において検出することが出来、また、いくつかのニトロ化タンパク質を同定した。今後、TNFα刺激による内因性活性窒素種による骨芽細胞ニトロ化を確認し、女性ホルモン様物質による内因性活性窒素種発生抑制作用およびニトロ化の抑制作用について検討する。また、そのメカニズムについて、ニトロ化タンパク質の同定から解明する。
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