半導体レーザー照射時に発生するフリーラジカルが歯髄の硬組織形成能促進のメカニズムに関与している作用機序を解明する目的で、ヒト歯髄培養細胞に低濃度の過酸化水素水(ROS)を作用させることでリン酸カルシウムの形成に深く関与しているオステオポンチン(OPN)およびオステオカルシン(OCN)のmRNA量の増加とタンパク質産生量の増加することが明らかとなった。また、長期培養を行い、von Kossa染色およびアリザリンレットS染色にて、石灰化結節(リンとカルシウム)の形成が有意に上昇することを報告した。 また、生体内の歯髄組織におよぼす半導体レーザーの影響についてラットの歯髄を人工的に露髄させ半導体レーザー照射を行い、象牙質様硬組織形成の促進過程を、ヘマトキシリンエオジン染色にて経時的に観察を行い、動物撮影用マイクロCTを用いて、同一固体における象牙質様硬組織形成過程を観察した。その結果、レーザー照射を行っていないコントロール群と比較し、照射1週間後の病理組織像にて炎症性細胞数の減少が認められ、2週後には、象牙質様硬組織の形成が開始し、4週目にはその面積の増大が認められた。また、CT所見においても経時的に歯髄腔内に象牙質様硬組織によるX線不透過像の亢進が認められた。 以上の結果から、レーザー照射によるヒト歯髄培養細胞の石灰化物形成能促進効果は、フリーラジカルによるメカニカルフォースが重要な役割を演じており、動物実験における結果から、レーザー照射による歯髄の硬組織形成能促進効果が明らかになったことで、歯髄保存療法におけるレーザー治療の有用性が示唆された。
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