研究概要 |
平成19年度の成果として下記3つの実験を行い,それぞれ結果を得た。 1.肝臓抽出液中に含まれるタンパク質網羅解析のための分離条件検討これまでのHPLCカラムでは,高分子に対する分離能は低かったが,検討の結果,500本以上のタンパク質ピークを良好に分離することに成功した。また,本法は,他のプロテオーム解析法と比較して,数十〜百倍高感度にタンパク質を定量及び同定することが可能であった。更に,分析法の精度も良好であることから,本法が簡便性で,高い感度と再現性を有した方法であることを証明できた。 2.トランスジェニック(Tg)マウスとノントランスジェニック(NTg)マウスのディファレンシャル解析及びタンパク質の同定 本研究ではまずC型肝炎ウィルスのコアタンパクを発現するTgの肝臓組織を対象に用いて,肝疾患の進行(発症初期,中期及び肝腫瘍癸症直前)に伴うタンパク質変動を明らかにした。具体的には,確立した条件を基に上記3段階の病態ステージでそれぞれTg及びNTgの検体を分析し,Tg/NTg比を算出し,変動するタンパク質の同定を行った。その結果,106種類のタンパク質がTgとNTgの間で変動していることを明らかにした。 3.ディファレンシャル解析結果の統計処理及び比較 解析の結果,発症初期で,肝細胞がん発生での低下がすでに知られているタンパク質が2種類検出された。この他,中期での体内の酸化を示すタンパク質の発現量上昇や,肝腫瘍発症直前での脂質代謝に関与するタンパク質の発現量の低下等が見られた。これらのタンパク質の変動は,研究協力者である小池教授らの報告した形態学的所見とほぼ一致しており,本法の信頼性を提示できた。 以上のように,本年度の成果では,本法の臨床プロテオミクスとしての適用性並びに有用性が示され,更に,バイオマーカーが病態推移とともにどのように変化するのかも明らかにすることができた。
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