本年度は、研究計画の実験1と実験2に該当する、モリス水迷路を用いた行動生理学的検討と海馬スライスを用いた電気生理学的検討に従事した。設備や技術面では、ほほ問題は見当たらず実験の開始時期はスムーズであった。現在の進行状況としては、モリス水迷路の実験において、実験群を拘束ストレス群と拘束ストレス負荷中に木の棒を咬ませストレスの発散の手段を与えた群に分け、各条件終了後、モリス水迷路にて海馬の空間記憶を指標に噛む行為のストレス減弱効果について検討中である。行動実験であるため、ラットの個体差や周辺環境の安定の困難性から多量の実験動物を必要とすることもあり、進行状況は計画通りとは言い難いが、ストレス群に比べ、ストレス発散の手段を与えた群は、学習効果が高いという傾向が得られた。さらに各群の脳を摘出し、脳切片を作成後、免疫組織学的手法にて、Fosタンパクの発現量を比較し検討しているところである。行動実験にて確実に噛むことのストレスの減弱効果が確認できたら、電気生理的実験に取り掛かる予定である。研究目的でも示したように、全身の一器官としての口腔機能の重要性を歯科の立場から立証するためには、ストレスによって低下した空間学習能力が噛むことで回復するという現象を確認し、ネットワークを解明していくことが重要である。20年度の課題となる、咀嚼器官から高次脳への入力系の解明の手がかりとして、ヒスタミンをターゲットとして、今後実験を進めるにあたりヒスタミンの投与量、投与法などの予備実験を同時に進めた。
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