研究成果 本研究の目的は、生体腎移植におけるドナーがその経験をどのように意味づけているか、質的研究手法により明らかにすることである。承諾を得たドナー24名に対して、半構成質問による面接を終えた。このうち母子間での腎移植20例の逐語録について、グラウンデッドセオリー・アプローチに則り、分析を進めているところである。 現在までのところ、母子間腎移植においては、先行研究「生体肝移植においてドナーとなった母親の経験」において見出したコアカテゴリ【自分はさておき】の経験および、カテゴリ【流れに乗って同調したわが子の移植】【自分を納得させた臓器提供】【わが子だけに注目した手術体験】を想起させる文脈が多く抽出された。まだ分析段階ではあるものの、母子間生体移植という条件下においては、母親であるドナーの経験の意味づけは酷似していることが示唆される。 このことは腎移植ドナーにおいても、肝移植ドナーの経験と同様、移植の決定に母親としての意思決定がみられない特異性や、自らの臓器提供が既存の危機理論とは異なるプロセスを持つ特異性、臓器提供手術の体験において病人役割を取れない特異性が窺える。 また、経験のその後のマイナスの影響についても同様に懸念され、その影響を軽減できるドナーに対するケア方法は、先行研究において開発したケア方〔1段階:積極的傾聴、2段階:語りによる意味づけめ促進、3段階:問題解決の補足〕と同一のものが使える可能性を示唆すると考える。
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