ADHD(注意欠陥多動性障害)は近年、医療関係者や教育者の間ではその認識が深まりつつあるが、専門知識を持たない一般の保護者等への浸透は依然浅く、ADHD児の行動は躾や気質の問題として保護者が非難されることが多い。また、人間関係形成において困難を呈することも少なくないなど、育児・教育・社会生活等さまざまな場面での支援が必要である。 ADHDが特別支援教育の対象となり通常学級で学校生活を送る体制が整備されてきているが、教育機関の中でも特に幼稚園においては全体として整備体制が遅れていると報告されており、軽度発達障害児への教育環境の充実が求められる。そこで、教師や保護者に替わり補助的な見守りの役割を担えるRFIDシステムの利用に注目した。 初等教育現場における支援の一環として、ADHD児の安全管理に関する保護者のニーズを明らかにし、ADHD児の行動特性から安全管理の一手段としてICタグが担える役割の可能性について追求することを目的として本研究を行っている。 本研究ではまず、疾患の有無を問わず一般の初等教育現場を対象としてRFIDシステムを用いた実験を行った。園外での散歩時にアクティブICタグを園児に装着し、アンテナを持つ保育士から半径約10m以上離れるとそのことがコンピューターのモニターで確認できるが、現段階では園児が保育士から離れた際に危険な行動をとろうとしていたデータがまだ得られておらず、RFIDシステムが園児の安全管理に有用であるという結果はまだ得られていない。今後、園児の集団の大きさやデータを収集する環壌を変更するなど、実験手法を変更して実験を継続していく予定である。
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