前年度に引き続き、歯髄細胞をin vitroで骨格筋分化誘導を試み、RT-PCR及び免疫染色により骨格筋特異的遺伝子の発現を調べた。無血清培地による筋分化誘導においてはMyoDの発現は分化誘導前に比べ増加傾向にあったが、筋管形成などの形態的変化は確認されなかった。MyoD-1をコードするcDNAを持つ発現コンストラクトによるMyoDの強制発現系においては無血清培地による誘導同様、筋管形成などの形態的変化は見られなかったが、Myogeninの発現誘導が見られた。さらに5-aza-2'-deoxycytidine (5-aza)を用いたDNAの脱メチル化による筋分化促進を試みたところ、骨格筋特有の筋管形成とMyosin Heavy Chainの発現が見られた。以上の結果から、歯髄細胞からの骨格筋分化にはクロマチン凝集の低下による筋特異的遺伝子発現の必要性が示唆された。しかし、筋分化の効率はきわめて低く、より分化誘導を効率よくするために歯髄幹細胞を純化することが考えられたため歯髄幹細胞の特性を明らかにし、歯髄幹細胞を純化する目的で、マウス切歯の歯髄より採取した細胞における組織幹細胞マーカーの発現をFCMにより解析した。その結果間葉系幹細胞マーカーであるSca-1とPDGFRを共に発現する細胞が歯髄に存在し、高い増殖能と脂肪、骨といった間葉系細胞への分化能を示すことが明らかとなった。以上の結果より、歯髄細胞における筋分化能は歯髄中に存在する高い分化能を持つ間葉系幹細胞の分化可塑性による可能性が考えられた。
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